【評価・感想】千里の棋譜
こんにちは。蓮根です。
今回は千里の棋譜。
私事ですが、このゲームはケムコさんとシルバースタージャパンさん合同のプレゼント企画で当たって頂いたもの。当たるなんて考えてもいなかったのでびっくりしました。当たることあるんですね。
ですが、ゲームの評価は別。厳正な目で評価していきたいと思います!
評価マーク(ランク順 S/A/B/C/D/E)
忖度していないつもりです。。
B評価にするかとても悩みましたが、アドベンチャーゲームでB評価を付けたものとの差を考えてA評価にしました。
内容
将棋を題材にしたコマンド選択式アドベンチャーゲーム。
1つのテーマが完結する章が3つあります。1章と2章は相当なボリューム。アドベンチャーゲームでこれだけボリュームがあるのも珍しいのでは、と思うくらいでした。
話は、記者の一ノ瀬歩未が将棋連盟会長にインタビューをするために、会長宅に行くところから始まります。
同行するのは歩未の小学校の同級生、長野圭。長野はプロ棋士になるための登竜門である奨励会員。奨励会三段まで来ています。
ちょっとだけ将棋界の説明をすると、奨励会に入会すると会員同士で対局があって、規定の成績以上を挙げると昇段できます。昇段規定も凄く厳しくて、8連勝とか。10勝2敗とか。同じくらいの力を持っている相手に、そういった成績を出せて、ようやく昇段できる世界です。
そして奨励会の最後が三段リーグ。三段全員で半年掛けたリーグ戦を行って、上位2名だけがプロ棋士になれます。半年に2人、年間4人。年齢制限があり、制限の年齢までにプロ棋士になれなかった人は退会してプロになるのを諦めることになります。
最近では、アマチュアで凄い成績を残して例外的にプロ編入を認められた、瀬川先生、今泉先生、折田先生などが居ますが、本当に例外ですね。瀬川先生の話は、「泣き虫しょったんの奇跡」という映画にもなっています。
閑話休題。
このゲームの主人公である2人が会長宅に来た時に、会長宅で事件が起こります。ここから2人は事件に巻き込まれていく。
そして同時に、将棋界全体に大きな事件が起こります。それが、最終王者戦。
将棋界の巨大スポンサーであるサイバーテレビが、名人位を掛けてAIと名人が対戦することを求めてきたというものです。
そしてAIが勝った場合には、AIが将棋の名人になる、というもの。将棋の名人位は江戸時代から続く、伝統あるもの。これを強いからという理由だけでAIがなって良いのか。
この2つの事件を軸にして、歩未と長野の2人が奔走することになります。
アドベンチャーゲームとしての難易度はそんなに高くありません。
ストーリーを読み進める部分と、場所移動して色々な人に話を聞いて、話を進める部分があります。
場所移動して話を聞いて、という部分はよくあるフラグ立てという感覚。詰まることも無かったし、そんなに時間が掛かって面倒、ということも感じませんでした。大丈夫。
ストーリーは良く出来たミステリーを読み進めている感じで、結構夢中になります。
2つの事件を軸にしているけど、そこに登場人物の過去や将棋界の実在した事件をうまく絡めてストーリーを構成しています。昔の将棋界を知っていると、なるほど!うまい!と思えて楽しめますが、知らなくても大丈夫。
AbemaTVとかで理路整然とした将棋界のイメージを持っている人が多いと思いますが、昭和の将棋界は色々な事があったのです。そういった話をこのゲームで知れて、面白いかもしれません。
知らなくて大丈夫、といえば将棋のルールが分からなくても大丈夫です。
将棋の用語までちゃんと説明がついています。将棋を知っている立場からすると、そこまで!?と思うくらいです。そして素晴らしいところは、このゲームの架空の用語か、実在の用語かをちゃんとわかるようにしているところ。丁寧な仕事でした。
もちろん、ストーリーや人物説明も丁寧。
人物詳細を開くと、ストーリーが少し書かれてしまっているので一覧画面ですが、今の時点でどういう事件が起きているか、人物ごとにわかっていること、などがすぐにわかります。
アドベンチャーをプレイしていると、少し時間が空いてしまった時に、次に何をすればいいか忘れることがありますが、このゲームでは絶対大丈夫。自信を持って、それは無いと言えます。
このゲームのストーリーの表現で好きなのは、タイムリミットを上手く組み込んでいるところ。
ミステリーや冒険小説の王道だと思っていますし、切迫感からストーリーに没入できます。そう、シンプルにミステリーとして面白いんですよね。
一応、ゲームオーバーもあり。ただ、困るようなことは一切ないので心配不要です。
バッドエンドの名前が、将棋用語なのが面白いです。
キャラクターのセリフにボイスもあり。全部にボイスがついているのではなく、重要な部分にある感じでした。
あまりストーリーのことを書けないので、内容はこれくらいにしますが、将棋を題材にしたミステリー。将棋を知っている人にも知らない人にもお薦めできる内容です。
将棋と名前が付くので、将棋を知らない人が「将棋を知らないから」という誤解で手に取らないのは本当にもったいないです。
コスパ
3000円で15時間以上プレイ。
アドベンチャーでこれだけボリュームがあるのは珍しい。コスパ十分と思っています。
感想
最初に会長宅で事件を告げられて事件に関与するのですが、その次辺りからかな、先を見たくて夢中になりました。
序盤は、将棋が好きで昭和の将棋界のことを知っていたという部分が面白さに繋がっていました。
中盤からはミステリーの面白さが勝っている感じ。
そして、1部の終わりから2部は、人物に惹かれて先を見たくなっていた感じです。
ミステリーの面白さは内容に書いた通り、タイムリミットを上手く生かしたストーリーと、二転三転する逆転劇、といった感じです。伏線回収できるの?と思っていたら、美しく回収されました。
そして人物像。これは特に2部です。
その世界を本気で大切にしている人は、どうしても厳しくしなければならない時があるんですよね。
ただ、同じ世界で本気でやっている人同士、厳しい時があると同時に、優しさが生まれるのかな、と。
勝負の世界という、僕の知らない世界ではありますが、そこで生きる人物の感性が描かれている。勝負の世界に生きる人間にはそれ以外の生活もあるし、勝負の世界を諦めるという考え、諦めなきゃいけない時もある。
そういったことを、何人もの登場人物の、違う立場からの目線で表現することで、色々考えさせられる作品になっていると思っています。
僕自身、プロとして仕事を出来ているかな、とか考えちゃいました。
こんな人におすすめ
・ミステリー好きな人
・将棋界好き、将棋界ってどんなのって興味ある人
・勝負を題材にした人物ドラマをゲームで観たい人